2013年10月23日水曜日

木は目覚めぬさなぎの話をする


肌寒くなるに連れて


どんどん こっくりとした深い香りを欲する


冬のモントリオールが舞台の


「ぼくたちのムッシュラザール」を観てたら


ホットミルクにメープルシロップを入れて飲みたい気分になった





冬の小学校の とある朝 


学校に来てみたら


担任のフランソワ先生が教室で首吊り自殺してた


代わりにやってきたのはアルジェリア移民の


ちょっと風変わりなバシール・ラザール先生


初めての授業でいきなりバルザックの書き取りだなんて


死んじゃった先生はそんな古臭いフランス語使わなかったよ









だけどもラザール先生は優しくてあったかくて


フランソワ先生が首吊りした教室で


みんなと一緒に死と向き合って 乗り越えようとしてくれる


校長先生達は あのことをもう過ぎたことにしようとするけど


ラザール先生は 目を逸らさないでいようとしてくれる





パーティにラザール先生が持ってきてたお菓子は


アルジェリア出身の先生のことだから


きっと すごくすごく甘いに違いない


まるで 昔モンマルトルで食べたアラブの甘いお菓子みたいに


ちょっとスパイシーで甘いバニラみたいな香りがしてきそう


たぶんそれは ハチミツみたいに甘くてねっとりしてる


そう、きっと


ベンゾインみたいな香りだ





子供達の悲しみと苦しみ


ラザール先生自身の 誰も知らない悲しみと苦しみ


死んじゃったフランソワ先生にも 校長先生にも 


みんなにもある


悲しさと寂しさ 暴力と優しさ 孤独感


生きることと 死ぬことへの想い





そんな柔らかいとこに ほんの少しの抑揚で


静かに静かに染み込むような


自由みたいな 甘い蜜の香り





いつの間にか集合写真を取るときの合言葉「チーズ」が


「バシール」になったよ

















「ぼくたちのムッシュ・ラザール」2011年 / カナダ
 監督:フィリップ・ファラルドー
 出演:フェラグ ソフィー・ネリッセ エミリアン・ネロン

0 件のコメント:

コメントを投稿